オーダーメード医療を実践へ 三重大病院/昨年11月「オーダーメイド医療部」新設

三重大病院は、遺伝子情報を利用して患者それぞれに最適な治療を提供するオーダーメード医療の実践を目指し、昨年11月に「オーダーメイド医療部」を立ち上げた。専任スタッフは設けないが、学内・院内の関連部署を密接に連携させることで、集学的な診療体制を構築した。遺伝子検査を利用した薬物療法については、当面9薬剤程度に絞って臨床応用を行うが、今後はオーダーメード薬物療法のシステム開発や遺伝カウンセリングなど、オーダーメード医療に関する幅広い活動を行っていく方針だ。

「オーダーメイド医療部」は、(1)遺伝子解析部門(臨床遺伝子診断の実施と遺伝カウンセリングの構築)(2)治療薬物モニター部門(薬剤血中濃度測定の実施と個別薬剤投与計画への介入、オーダーメード薬物療法システムの構築)(3)予防医療部門(個々人の遺伝情報に基づいた予防医療の開発)(4)臨床部門(オーダーメード医療を実践するとともに、県内医療機関からの研修の受け入れ)(5)研究開発部門(各種疾患関連遺伝子一塩基多型の発見と臨床的有用性の検証)(6)情報管理部門(個人情報保護法に基づいたデータの統括、管理)―の6部門からなる。

同部の部長を兼任する登勉・三重大大学院医学系研究科・病態解明医学講座臨床検査医学分野教授(写真)は、命名の理由について、「大学病院などでは、すでに遺伝子診療部を立ち上げているところもあるが、遺伝子診療だとどうしても限定した印象を与えてしまう」と説明。

さらに「ヒトゲノム計画の終了で、遺伝病だけでなく、生活習慣病の疾患領域でも遺伝子との関連が明らかになってきている。ゲノム情報を利用したオーダーメード医療の対象患者がこれから増えることは間違いなく、社会に与えるインパクトも大きい」と述べ、オーダーメード医療の臨床応用の必要性を強調する。

登氏によると、研究レベルではなく、院内や大学の関係部門が連携して、大学病院に遺伝子診療に関する臨床部門が設置されるのは国内初だという。

●すでに10数例に臨床応用

6部門には、院内の中央検査部、薬剤部、関連診療科のほか、三重大のゲノム再生医学分野や生命科学研究支援センターなどが参画。遺伝子検査を利用した薬物療法は現在、5-FU、塩酸イリノテカンなどの抗がん剤や、移植に使用される免疫抑制剤などを対象としており、すでに10数例に臨床応用している。

具体的なオーダーメード薬物投与システムの開発については、(1)薬剤代謝酵素遺伝子多型の迅速かつ経済的な解析(2)薬物血中濃度測定(3)薬剤効果と副作用の調査(4)遺伝子多型に基づく薬剤投与プログラムの開発―などを実施する計画。

また、生活習慣病早期診断システムの開発、遺伝子解析技術の開発、新規候補遺伝子探索のほか、臨床遺伝専門医、遺伝看護師を配置した「遺伝相談室」を院内に設置し、県内の医療機関とも連携して遺伝カウンセリングの体制整備を進めていく予定だ。

他方、オーダーメード医療の実現には遺伝子検査の標準化が不可欠となるが、これについては登氏も関与している「JMCoE」構想(日本における遺伝子マーカーの検査の標準化を推進するネットワーク構想)の活動とも連携していく計画だ。

さらに、オーダーメード薬物療法を普及、運用させるためのコンソーシアムや、県内の医療機関とのネットワークによる「オーダーメイド医療研究会」の設立を計画している。コンソーシアムについては、試薬メーカーなど、すでに15社が賛同する意思を示しているという。