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  ▼ 記者の視点
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社会保障費の自然増2200億円めぐる攻防
自民党厚労族と官邸が綱引き
2008.7.23

 2009年度予算概算要求基準(シーリング)の決定に向け、社会保障費の自然増22000億円の圧縮をめぐる綱引きが本格化している。

 「医療崩壊阻止」を合言葉に、2200億円圧縮の撤廃を求める声が、自民党の厚生労働関係議員や日本医師会などから日増しに強まっている。一方、福田康夫首相は財政健全化を優先する立場から、あくまで歳出削減を堅持する姿勢を貫いている。

 先制攻撃を仕掛けたのは、まず自民党。5月28日、自民党厚労部会と社会保障制度調査会が合同で2200億円の撤廃を決議した。

 衛藤晟一厚労部会長は記者団に対し、「これだけ急ピッチで少子高齢化が進展している中、社会保障費が増えると財政がもたないといって圧縮努力を続けてきた。しかし、もう限界が来た」と断言した。

 もともと2200億円の削減は、06年に小泉内閣が財政再建のレールを敷く中で決定した5年間の歳出削減の一環。11年度に一般会計のプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化させるため、07年から11年まで社会保障費の伸びを1.1兆円抑える努力義務が閣議決定された。

 過去2年間は、雇用保険の見直しや薬価の引き下げ、後発医薬品の使用促進などで財源を絞り出してきた。しかし、地方の医師不足や長寿医療制度(後期高齢者医療制度)のほころびなど、地域医療の崩壊が表面化してきた。こうした背景から、09年度以降の継続はもはや不可能というのが自民党の厚労関係議員や舛添要一厚生労働相、医療関係団体の一致した認識だ。

 一方で、集中砲火を浴びながらも福田首相が2200億円圧縮を取り下げないのは、「『改革後退』というイメージを与えたくないという一点のためだ」とある元厚相経験者が解説する。実際、経済財政諮問会議が6月末にまとめた「骨太の方針2008」の原案をみると、歳出全般については、「最大限の削減を行う」との文言を盛り込み、骨太方針06、同07にある「財政再建路線」の継続を決めた。

◎ 福田首相のおひざ元からも2200億円撤回の声高まる

 福田首相のおひざ元である群馬県の医療関係団体の幹部の口からは、2200億円圧縮の撤回がされない場合の「福田不支持」をちらつかせる発言も出るなど、首相にとっては心中穏やかでない。日本医師会の中川俊男常任理事は「(地域の医師会の)現状の支持率は急落しているのではないか。こういう状況で2200億円を堅持するというのは、どういう空気を読んで発言しているのか理解できない」と、次期衆院選をにらんだ揺さぶりをかけている。

 ただし実際のところ、福田首相は医師不足対策などの財源については2200億円の圧縮とは別に手当する方針であるほか、長寿医療制度の運用面見直しの財源も補正予算で充当することが濃厚となるなど、「2200億円」の枠は事実上崩壊している。

◎ 「今後も激しい風雨が続く」大田経財相

 大田弘子経済財政担当相も骨太方針の原案を閣議決定した後、記者団に対し、「特に社会保障の取りまとめは、昨年の国会から骨太06に沿った抑制を止めるべきという声が大きく、難しかった」と振り返っている。また、今後についても「激しい(歳出増圧力という)風雨が続く。年末の予算編成までいくつもの山場がある」と懸念。今後のシーリングに向けて、2200億円圧縮の撤回を求める厚労関係議員と対峙(たいじ)していく構えを見せた。

 増え続ける社会保障費を賄うためには、当然、安定財源のための消費税増税論議は避けて通れない。次期衆院選もにらみ、まさに福田首相は進むも地獄、退くも地獄という、茨(いばら)の道しか残されていない。(半田 良太)



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