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日本初の再生医療製品「ジェイス」
再生医療に保険算定要件の壁
救急医療で使えないケースも
2009.7.1
日本初の再生医療製品「ジェイス」が保険収載されてから半年が経過したが、臨床現場では保険算定の要件を疑問視する声が上がっている。同製品を使用するためには、「広範囲熱傷特定集中治療室管理料」(以下、熱傷管理料)の施設基準の届け出を行う必要があるほか、使用の際は「20枚を限度として算定する」という制限が付いている。同製品の登場で、重症熱傷患者の救命率向上が期待されたものの、保険算定要件を満たせない施設が多く、救急医療に応用できない施設が複数あることが明らかになった。
ジェイスは、患者から採取した皮膚組織の細胞を培養して作製する表皮シート。今年1月に保険収載された。ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社(愛知県蒲郡市、小澤洋介社長、以下J-TEC社)が製造・販売している。
ジェイス1枚あたり30万6000円で、高額療養費が適用された場合、月に10〜20万円ほどの医療費になるとされている。
適応対象は、深達性II度・III度の熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上に達している熱傷患者。II度・III度の熱傷創が30%以上の患者は、年間約900人発生しており、このうち約500人は死亡している。
厚生労働省は、保険収載を了承した直後に昨年12月26日付で通知を出した。同通知では、ジェイスの保険算定要件として、熱傷管理料の施設基準の届け出を行うことや、20枚までしか算定しないことなどを提示した。
●専用治療室が必須
熱傷管理料を申請するには、<1>専用の治療室を持っている<2>専任の医師が常時勤務している<3>患者2人につき専属の看護師が1人以上いる<4>治療対象はII度熱傷30%以上の重症広範囲熱傷患者に限る−などの条件を満たす必要がある。
熱傷管理料加算をとった場合、「重症熱傷患者」しか治療できないことになる。重症熱傷患者がいないときでも、治療室と室内のベッドをあけておく必要があり、ほかの治療室が埋まっている場合でも、重症熱傷患者以外はその治療室を使えない。さらに医師、看護師は重症熱傷患者専任なので、当然ながら重症熱傷以外の患者を治療できない。このため、救急医療を行う施設の中には、治療室・病床を効率良く運用する観点から、熱傷管理料の申請を見送るケースが少なくないという。
2008年7月1日時点で熱傷管理料の届け出施設は25施設(厚労省保険局医療課)にすぎない。
聖マリアンナ医科大の熊谷憲夫氏によると「熱傷治療専門医がいても、施設要件を満たせず、ジェイスでの治療ができない状態。要件は熱傷治療の現状と合っておらず、適当でない」と指摘する。同要件を決定した経緯について厚労省保険局は、「関係学会等の意見も聞いた上で決定した」としている。
●市販後臨床試験も足踏み
ジェイス保険収載後は、聖マリアンナ医科大を中心として、国内の十数施設で数十例ほどの製造販売後臨床試験をすぐに開始する予定だった。
しかし、熱傷管理料を申請しない施設も出たため、製造販売後臨床試験を実施できずにいる。現在、参加施設を見直している状態で、「こうした事態を、当初予想していなかった」と熊谷氏は語る。
製造販売後臨床試験の開始時期は秋頃にずれ込みそうで、「1年〜1年半ほど実施する予定」(熊谷氏)としている。
●「20枚」制限で治療に支障
保険で算定できる「枚数」も問題になっている。厚労省は、ジェイス保険算定の要件として、「20枚を限度として算定」としている。
しかし、ここで1つの矛盾が生じる。同製品の適用対象は、「深達性II度・III度の熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上に達している熱傷患者」。同製品1枚につき、成人では約0.5%をカバーする。そのため、20枚を限度にすると、約10%の面積しかカバーできないことになる。 愛知医科大の横尾和久氏は「30%以上の症例を対象にしているのに、大人で10%そこそこしかカバーできないのは矛盾だ」と指摘する。20枚を超えた分については、現在、J-TEC社が人道的観点から負担している状態だ。
一般的に、熱傷範囲が狭い場合は患者自身の皮膚を移植することで治療できる。しかし、ジェイスが適用となる「30%以上の重症熱傷」は広範囲の熱傷で、移植できる患者自身の皮膚が極めて限られており、命にかかわる状態だ。
熊谷氏は、「ジェイスの使用対象は、40〜50%の重症熱傷患者が多いと想定される。生着率70〜80%ほどで移植してもすべて生着するわけではない。追加の移植を考慮すれば、20枚という枚数は十分ではない」と強調する。
再生医療製品が実用化したことで重症熱傷患者の救命率が上がると期待された。だが、実際の医療現場で使用するためには、少なくとも2つのハードルが存在することが明らかになった。熊谷氏や横尾氏は「学会などから声を上げていき、要件を見直す必要がある」と指摘する。
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