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大阪の救急医療情報システム「まもってNET」
搬送先の確保困難解消に成果
患者背景も明らかに
2009.7.3
大阪府が昨年10月に開始した、救急患者の緊急搬送要請システム「救急SOS−まもってNET」が救急医療機関の協力を得て予想以上の効果を上げている。現場で救急隊が緊急度が高いと考えているにもかかわらず医療機関搬送を5回以上断られたり、患者を救急車に収容後30分以上搬送先が確定しなかった症例について、搬送先選定にかかる時間を短縮するシステム。新システムの有効率(搬送先確定率)は72%という実績を確保したほか、搬送先選定に難渋する患者の背景について、救急医療を担当する行政部局で具体的に知ることができたという副産物もある。
●2007年の年末年始事例がきっかけ
まもってNETが導入されたのは、大阪府内で2007年の年末年始に発生した搬送先確保困難事例がきっかけ。メディアを中心に「たらいまわし」として厳しい批判を集める中で、大阪府は救急医療体制の再構築に乗り出したが、そのうちの事業の1つが救急医療情報システムの改善だった。具体的な改善策としては、タッチパネル式入力専用端末の配備、携帯電話による閲覧・入力の導入、入力項目の見直しなどがあるが、それと併せて「まもってNET」が導入された。
救急医療情報システムは、全国的に見ても救急隊にはあまり評判は良くなく、情報が事実を反映していない、救急搬送の現場で情報検索ができないなどの課題が指摘されてきた。
リニューアルにあたってのコンセプトは、<1>現場状況に応じた消防と医療のコミュニケーションの促進<2>搬送先確保困難時の対応<3>医療機関の入力作業の軽減―の3点。特に<3>の医療機関の入力作業は、現実的には多忙な救急医療現場で受け入れ可否情報をきめ細かく入力することは負担が大きく困難なため、情報の精度への信頼がなく、救急医療情報システム不要論の根拠とされることもある。
●時間短縮が最大の目的
医療機関の入力にかかる負担を軽減することで、入力回数は飛躍的に増加したが、それでもリアルタイムな情報提供というには限界がある。こうした背景のもと稼働した「まもってNET」だが、このシステムは、現場の救急隊や消防本部が音声や文字で患者の病状を携帯電話やパソコンから登録すると、一度に複数の救急告示病院(約240病院)の専用端末器(フレッツフォン)のアラームが鳴り、患者情報を提供、その情報をもとに受け入れ可否について医療機関が○、△、×を入力、その結果を救急隊が入手し、○、△と入力した医療機関に電話を入れ受け入れ先を決めるというもの。
病院への電話連絡にかかる時間を短縮するのが目的だが、複数の病院が同時に情報を入手し、応需可否を救急隊に伝えられることがシステムの根幹。
●同じことは繰り返さない
まもってNETを構築し、運営してきた大阪府健康医療部 保健医療室医療対策課救急・災害医療グループの川口竜助総括主査(医師)は、まもってNETの効果および課題を明らかにすること、まもってNETを利用した患者の背景因子を分析し「搬送先確保困難事例」を解消することを目的に、昨年12月8日〜今年3月31日までの約4カ月間の利用実態を調査し、6月に行われた関係学会で、同結果の一部を報告している。ただし、厳密な効果は今後の消防関係統計で評価する必要があるとしている。
その結果だが、まもってNETの利用件数と症例の背景因子については、図2、図3(2面)のとおり。利用件数については、病院を選定できた割合が週単位で報告されている。1月第3週のように、全体に困難事例が多いと有効率が低い。またこのシステムの稼働とともに、まもってNETに頼らなければならない事例そのものが減少する状況もみえる。これについては今後の報告と分析が待たれるところだ。
また、救急隊からは「(当該消防本部の)圏域内で医療機関が決定できない割合が約4割あり、このシステムのおかげで大変助かっている」といった声を得ているとしており、同システムに対する評価は一般的に高いことがうかがえる。特に「結果的に不幸な転帰となった昨年(07年末)の事案を思い起こさせる事案が08年末にも起こったが、システムが機能して病院が決まった」という事例も存在したという。ただ、受け入れ可能回答が実際には不可だったケースや、消防本部間で適応症例の判断に差があるのではないかという意見もあった。
一方、医療機関側からは、「救急隊が困っていることがよく分かった」と新たな認識を示す声もあれば、「利用基準を満たさない事例で利用されているケースがある」「受け入れたあと、対応に困る症例もある」など、とまどいを示す声も聞かれたようだ。
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